vol4. 定番デザインでつくりたい
今回モンゴルのカシミヤでつくったのは、クルーネックセーターとカーディガンの2型です。
洋服を長く着るための要素の一つに「デザイン」がありますが、やはり定番ものが一番だと考えた上でのラインナップになりました。セーターといえばこういう形だよね、その想像の延長線にあるデザインになっています。年代問わず着られて、毎年ワードローブから出してきても違和感がないのはそういうデザインです。ましてやカシミヤ。シーズンで使い捨てるのではなく、時を重ね表情の違いを感じた上で尚大事にしていきたいと思える、そんな一着を目指して。
まずは、糸とゲージのお話を。
2アイテムに共通しているこのカシミヤニット素材は、26番手の双糸を12ゲージの片畦で編み立てています。具体的に説明していきますね。
26番手:1gあたりの繊維を伸ばすと、どのくらいの長さのニット糸になるか、ということを表していて、26番手の場合は「1gのカシミヤ繊維を26mに伸ばした糸の細さ」ということです。数字が大きければ大きいほど細い糸となり、26番手は比較的細い番手として扱われます。しなやかさと上品な表情が生まれ、ニットウエアとして着やすい厚みになる糸です。
双糸:糸を2本撚り合わせて1本にした糸のことを双糸といいます。2本を撚り合わせることで強度が生まれますが、ニットに求める柔らかさや風合いを実現するためには撚りが強すぎてはいけません。反対に撚りが甘すぎると繊維が抜けてしまうので、強度と柔らかさのバランスを取るためには長い繊維を使う必要があります。お分かりでしょうが、カシミヤ繊維の長さはここでもメリットとなっているんですね。
12ゲージ:ゲージとは、編み目の大きさのこと。12ゲージは目が詰まったハイゲージニットと呼ばれる部類ですが、ハイゲージの中では編み目は大きい方です。なので薄いアンダーの上に一枚で着ても体の線を拾わない安心感がありますし、コートの中に着てもぶくぶくすることなく、ちょうどいい塩梅に。
片畦編み:ニットに表情を与えるのはその編み方です。片畦は、編み目が立体的に見えどちらかというとカジュアルな印象ですが、カシミヤのほわほわとした繊維がその凹凸を埋めるように、ウールには出せないカシミヤの片畦編みならではの表情になりました。伸縮性が出ることもこの編み方の利点です。
3色のバリエーション:NATURAL BEIGE、DARK GREY、BORDEAUXの3色を準備しています。奇をてらわず、長く寄り添ってくれるであろうカラーを選びました。この中でもNATURAL BEIGEは染色していない、カシミヤ山羊の毛そのままの色で、その分柔らかさも一番実感できます。
モンゴルカシミヤ クルーネックセーター
身頃は少々丸みを持たせ、カシミヤニットが持つ優しい空気感に寄り添うシルエットを意識しています。
こだわったのはクルーネック部分で、スウェットのように少し詰まったデザインにしています。一枚で着ても首まわりが寂しくならず、ロンTを重ね着しても首元にチラッと見えるように。加えると、脱ぎ着する上でセーターに一番負荷がかかるのはネック部分なので、長く着るためにその部分が伸びにくいよう配慮したということもあります。
カシミヤ素材自体は届いた段階で柔らかく風合いのある仕上がりとなっていますが、セーターとしてのサイズ感は着ていくうちに次第に目のテンションがゆるまり、自然なフィット感になっていきます。ぜひ大事に育てていただきたいと思います。
モンゴルカシミヤ ボタンレスカーディガン
カーディガンに関して、定番品と少し違うのは「ボタンレス」であること。その名の通りカーディガンの前を留めるボタンがありません。カーディガンはボタンが付いていて前を閉めることができるのが一般的だと思いますが、今回はその要素を無くしました。
なぜかというと、そのほうがシルエットが綺麗だったからです。ボタンがあるともう片方には対となるボタンホールが存在し、どうしても前身頃の一部が重なることを前提に設計しますが、それがないことでフロントがよりシンプルになり、ニット生地の落ちるラインが出ます。
ボタンがない代わりという訳ではありませんが、デザイン要素として左右にポケットを付けました。ニットなので重いものは入れられませんが、リップやイヤホン、ヘアゴムなどを忍ばせてください。
2枚合わせてセットアップに
クルーネックカーディガンとボタンレスカーディガンを合わせて着ると、セットアップが完成します。最近はアウターがとても優秀な上に暖冬気味なので寒冷地でない限り中にたくさん着込む必要はありませんが、きっちり合わせた印象が出るセットアップは使えると思います。