vol.3 モンゴリアンカシミヤのバランス感

長く着られるオリジナルのカシミヤアイテムをつくりたいと決意したZUTTOですが、ではどこのカシミヤで、どういうものをつくろうか。バランスの良いカシミヤを探していた中、ご縁があってモンゴルのカシミヤをご紹介いただきました。

ここでいうバランスとは、「品質」と「価格」のこと。カシミヤアイテムは、セーターにしてもマフラーにしてもウールと比べるとやはり高価なもの。もちろん、カシミヤ山羊の希少性があるので当然のことなのですが、セーター1枚10〜15万円がザラにあるカシミヤ業界。素材の本当の価値が分からなくなるような値段設定が蔓延る中、安価なものを追求したい訳ではなく、適切で手の届くもの、そして長く愛用できるカシミヤがあればと探していたところ、品質と価格に納得のいくものがモンゴルのカシミヤでした。

モンゴリアンカシミヤの特徴

・カシミヤの中でも超長毛である

モンゴリアンカシミヤの毛は平均40mm以上で、一般的なカシミヤ毛より6-8mm長いと言われています。毛が長いことのメリットとしては、丈夫で耐久性の優れた一着となること。また、長い繊維は互いにより強く絡み合うため、表面からの繊維の脱落が少なくなります。これにより、ピリング(毛玉)が出来にくく、製品の外観が長く美しく保たれます。

そして、繊維が長いことは実は生産時の廃棄ロスの少なさにも繋がっています。それにより余分なコストが発生せず、最終価格も抑えられるのです。

・伝統的な生活様式=自然環境への配慮がある。

近年、ファストファッションブランドによる使用でカシミヤをより安価に採取しようと、一部地域のカシミヤ山羊の過放牧が問題になっています。本来、遊牧民の家畜として1年を通して一緒に移動しながら生活してきたカシミヤ山羊ですが、一部地域では商業的な側面を重視して定住したことで、山羊が草地を荒らし砂漠化が進んでいると聞くことがあります。

今回カシミヤの素材調達を依頼した遊牧民たちは、カシミヤ山羊を自然放牧する伝統的な暮らしをしており、彼らのカシミヤ山羊は1日15km程度自由に移動してストレスなく豊かな自然の中で育っています。山羊が草を食べても移動して、移動している間にまた草が生えてくる、牧草地の自然再生の機会を輪作のような形で自ら創出しています。

そうした自然な良環境にいるからか、採取される柔毛は他国と比べ一頭あたり20%ほど多いそうです。

・持続性とトレーサビリティ

今回ZUTTOのカシミヤアイテムの製造を依頼した工場は、SUTAINABLE FIBERE ALLIANCEという、モンゴルや中国でのカシミヤの持続可能な生産を目指した認証団体に加盟しています。この団体では、カシミヤ山羊の生育及び関連工場が自然環境に与える影響を少なくするための取り組みを行い、アニマルウエアフェアの活動を監視し、労働者の公正な雇用と労働条件、児童労働の防止、伝統的な地域社会の保護などを掲げています。

このように、カシミヤの品質や製造背景に魅力があることが第一ですが、カシミヤ工場とほぼ直接やり取りができることで中間マージンが発生せず、最終的なカシミヤセーターとカーディガンの価格が釣り上がることなく、理想としていた品質と価格のバランスが取れたことも、選んだ要因です。

どんなに良いものであっても手に取りたいと思えるストーリーと品質、そして納得のできる価格でないと意味がありません。今回、わたし達がモンゴリアンカシミヤを選んだのはこういった経緯がありました。

次回は、展開予定のセーターとカーディガンのデザインについて。1stサンプルをお見せしながらご紹介していきます。

Previous
Previous

vol4. 定番デザインでつくりたい

Next
Next

vol.2 自然がもたらすカシミヤの機能性と美しさ。