手にした瞬間始まる、カシミヤとの特別な旅。

モンゴルの雄大な自然に育まれたカシミヤから生み出す、シンプルで長く愛用したいニットシリーズ。着るたびに感じる柔らかさ、暖かさ、そして心地良さ。お手入れをしながら大事にすると、まるでその愛情に応えるようふっくらと空気を含み育っていきます。この変化は、あなたとの絆が深まっていく証。他の誰のものでもない、あなただけの一着へとなっていきます。

「愛着を持って長く着る。」簡単そうで難しいこの理想に近づくために、選んだ素材はカシミヤでした。繊細なイメージのある素材ですが、正しい扱いをすれば実は長く愛用できるアイテム。知れば知るほど魅力を感じるカシミヤについて、ぜひ知ってください。

カシミヤを選ぶ理由。

カシミヤはモンゴルや中国、イランなど夏と冬の寒暖差が激しい過酷な山岳地帯で生きているカシミヤ山羊から取れる天然の産毛のことです。冬はマイナス30℃という厳しい環境で生き延びるために、カシミヤ山羊の表面は粗野で太い獣毛が覆っていますが、その内側には細く長く柔らかい産毛があります。その産毛こそがカシミヤの暖かさの所以で、繊維が細ければ細いほど空気を抱え込み、そして体温を外に逃さないという断熱材の役割を果たしています。

細さ=カシミヤの暖かさ最大の特徴

髪の毛よりも細い、わずか14-16ミクロンのカシミヤ繊維が、驚くほどの保温性を生み出します。一般的なウールが25-30ミクロンほどの細さなので、カシミヤはより多くの微細な層を作り出し、空気を閉じ込めることができる構造だと分かります。さらに、カシミヤは熱伝導率が低いため、薄くても繊維の中に閉じ込めた暖かい空気を逃さないのです。

最小限の"チクチク感"

カシミヤやウールなどの天然毛のセーターを着る上で気になる「チクチク具合」ですが、それも毛の繊維の細さに関係しています。人間の肌は30ミクロン以上の太さの繊維を感知すると「チクチクしている」と感じるそうで、加えて太い繊維ほど硬く、皮膚を刺激します。先述したようにカシミヤ繊維は14-16ミクロンと細く、そして柔軟で皮膚に触れても簡単に曲がります。さらにカシミヤは1年に1度、生え変わった毛を櫛で梳くようにして採取します。毛を切る訳ではないので断面がスパッとカットされた状態にならず、毛の先端は細いまま。それが糸になりセーターになった時に、肌への刺激を抑えてくれるのです。もちろん個人差はありますが、数字が示す繊維の細さに加え、実際に着用してみるとその柔らかさ、ふわふわ感に驚きます。

吸湿性と暖かさの関係

カシミヤは自重の約30%もの水分を吸収することができ、キューティクルが開閉し呼吸をするように吸湿と放湿を繰り返します。体から発する水蒸気を繊維内部で暖かさに変え、かつ蒸れないよう調整することで快適な着心地を生み出しています。つまり、カシミヤは単に外気を遮るだけでなく、私たちの体温を利用して積極的に暖かさを生み出しているという訳です。

さらに興味深いのは、この吸湿と放熱のサイクルが、外気温や体温の変化に応じて自動的に調整される点。暑くなれば余分な水分を放出し、寒くなればより多くの水分を吸収して熱を生み出します。これは、天然繊維だけが持つ独自の機能性です。

独特のしっとりとした手触り

カシミヤに触れると、どこかしっとりと、ぬめりのある質感に気付きます。これは、カシミヤが持つ天然の油脂(ラノリン)が表面を覆っているから。カシミヤの柔らかさや手触りの良さもこのラノリンによるものですが、カシミヤが長く愛用出来る素材であると説明出来る要素の一つでもあります。

天然の防水層:若干の撥水性があり、防汚性にも優れています。カシミヤに何かこぼしてしまってもすぐには染み込まないので、慌てず拭けばシミになりにくいのです。

耐久性の向上:繊維を保護し、摩耗や損傷から守ることでカシミヤセーターの寿命を延ばしてくれます。

カシミヤ独自の、長く愛用できる要素。

自然の修復力(戻ろうとする力)

カシミヤはキューティクルを開閉させ吸湿と放湿を繰り返す機能を備えているとお伝えしましたが、その働きは実は元の形に戻ろうとする修復力でもあります。1日着たカシミヤニットを数日休ませる必要があるのはそのためで、その間に伸びた部分や変形した箇所は元の形に戻ろうとします。つまり、正しいケアや着用のサイクルを守ると、カシミヤセーターやカーディガンは美しい形を保った状態で長く着ることができるのです。

このように、カシミヤが持つ機能性にはわたし達が追求する「長く愛用する」ための要素が詰まっています。こんなに多機能な素材であることに驚くばかりですが、それはやはり寒暖の差が激しい環境に適応したカシミヤ山羊に与えられた自然の恩恵。似たようなメリットを追求した化学繊維の素晴らしさはもちろんありますが、長い年月をかけて自然が生み出した素材の魅力には、やはり特別なものがあります。カシミヤのセーターやカーディガンを身に纏うとき、肌に触れる優しい感触、自然な光沢、そして吸湿性と保温性のバランスは唯一無二のものです。

モンゴリアンカシミヤのバランス感。

私たちが手がけるカシミヤセーターやカーディガンは、モンゴリアンカシミヤを採用しています。

モンゴルの広大な土地に暮らす遊牧民の方々は、家族の一員としてカシミヤ山羊や他の家畜とともに移動をしながら生活拠点を変えていく文化を持ちます。春になると自然と毛が抜け落ちる前にカシミヤ山羊の毛を櫛で梳いて内側の柔毛を集めカシミヤの原毛を提供しているのです。

モンゴリアンカシミヤの特徴。

カシミヤの中でも超長毛である

モンゴリアンカシミヤの毛は平均40mm以上で、一般的なカシミヤ毛より6-8mm長いと言われています。毛が長いことのメリットとしては、丈夫で耐久性の優れた一着となること。また、長い繊維は互いにより強く絡み合うため、表面からの繊維の脱落が少なくなります。これにより、ピリング(毛玉)が出来にくく、製品の外観が長く美しく保たれます。

伝統的な生活様式=自然環境への配慮がある。

近年、ファストファッションブランドによる使用でカシミヤをより安価に採取しようと、一部地域のカシミヤ山羊の過放牧と草地の砂漠化が問題になっています。

今回カシミヤの素材調達を依頼した遊牧民たちは、カシミヤ山羊を自然放牧する伝統的な暮らしをしており、彼らのカシミヤ山羊は1日15km程度自由に移動してストレスなく豊かな自然の中で育っています。山羊が草を食べても移動して、移動している間にまた草が生えてくる、牧草地の自然再生の機会を輪作のような形で自ら創出しています。

持続性とトレーサビリティ

カシミヤニットの製造を依頼した工場は、SUTAINABLE FIBERE ALLIANCEという、モンゴルや中国でのカシミヤの持続可能な生産を目指した認証団体に加盟しています。この団体では、カシミヤ山羊の生育及び関連工場が自然環境に与える影響を少なくするための取り組みを行い、アニマルウエアフェアの活動を監視し、労働者の公正な雇用と労働条件、児童労働の防止、伝統的な地域社会の保護などを掲げています。

このように、カシミヤの品質や製造背景に魅力があることが第一ですが、カシミヤ工場とほぼ直接やり取りができることで中間マージンが発生せず、最終的なカシミヤセーターとカーディガンの価格が釣り上がることなく、理想としていた品質と価格のバランスが取れたことも、選んだ要因です。

全てにおける「適正」とは何か

カシミヤの希少性はあるにせよ、最近のラグジュアリーブランドがカシミヤアイテムにつける値段には目を見張ってしまうことがあります。同じカシミヤ工場で作っているのに、あちらのニットは数十万円、かたやこちらは数万円。デザインや流通の方法が異なるとはいえ、素材が持つ本当の価値がどこにあるのか分からなくなるような値段設定が蔓延る中、安価なものを追求したい訳ではなく、適切で手の届くもの、そして長く愛用できるカシミヤを探していたところ、品質と価格に納得のいくバランスのものがモンゴルのカシミヤでした。モンゴルの原毛提供者や生産工場、そして私たちブランド側も適正かつ妥当な対価で算出した価格で提供しています。

どんなに良いものであっても手に取りたいと思えるストーリーと品質、そして納得のできる価格でないと意味がありません。私たちがモンゴリアンカシミヤを選んだのはこういった経緯がありました。

FEATURES

カシミヤものづくりのよみもの

’24/09/17 vol. 4

定番デザインでつくりたい。

モンゴルカシミヤでつくるクルーネックセーターとボタンレスカーディガンを展開します。シーズンで使い捨てるのではなく、年代問わず着られて、毎年ワードローブから出してきても違和感がないデザインを追求しています。

‘24/07/26 vol. 1

カシミヤを選ぶ理由。

カシミヤは暖かい。けれど繊細で扱いが難しそう。そんなイメージがあったカシミヤ素材ですが、その一つ一つの理由を探ってみることにしました。まず暖かさの理由から。他の毛のものとは何が違うのでしょうか。

’24/08/08 vol. 2

自然がもたらすカシミヤの機能性と美しさ。

カシミヤの機能性はなぜ「長く愛用する」という点につながるのでしょうか。ポイントは「普遍性」だと考えており、時代や流行、年代に左右されない上品な輝きは何年経っても色褪せることがありませんし、使いこむほどに味わいが増し着る人との絆を深めていく素材だと理解を深めていきました。

’24/08/27 vol. 3

モンゴリアンカシミヤのバランス感。

長く着られるオリジナルのカシミヤアイテムをつくりたいと決意したZUTTOですが、ではどこのカシミヤで、どういうものをつくろうか。バランスの良いカシミヤを探していた中、ご縁があってモンゴルのカシミヤをご紹介いただきました。

LOOK

Cashmere Crewneck Sweater & Cardigan